本記事では、2022年2月21日に開かれた「第7回 BIM/CIM推進委員会」資料から、2022年度(令和4年度)のBIM/CIM実施方針について解説します。
令和4年度のBIM/CIM活用業務・工事ではどのような対応が求められるのか、リクワイヤメントはどのように変更されるのか、解説します。
令和4年度リクワイヤメントの実施目的
リクワイヤメントとは?
リクワイヤメントとは、BIM/CIM活用業務・工事を実施するにあたり、発注者から受注者に対する「要求事項」のことをいいます。
リクワイヤメントの目的。これまでの流れと令和4年度の位置づけ
昨年度に引き続き、令和4年度も円滑な事業執行を目的にリクワイヤメントが実施されることが示されました。リクワイヤメントは原則適用の上乗せ分として、業務・工事で任意に設定されるリクワイヤメントを実施することになります。
リクワイヤメントの実施目的は、令和2年度までは「円滑な事業執行」「基準要領等の改定に向けた課題抽出」の2つが設定されていました。「基準要領等の改定に向けた課題抽出」というのは、BIM/CIM活用業務や工事の受注者に対してリクワイヤメントを試行することで、基準やガイドラインの整備に向けて課題点などを抽出、検証するために設定されていました。
国土交通省は令和5年度のBIM/CIM原則適用化に向けて、BIM/CIMに関わる各種の要領やガイドラインを毎年のように改定してきましたが、これらの基準類にはこれまでのリクワイヤメントの試行で蓄積された、課題やそれらの対応策に関する知見が活かされています。
このような背景で各種基準類の整備が進んだことから、令和3年度からはリクワイヤメント目的が「円滑な事業執行」に絞られました。令和4年度も引き続き「円滑な事業執行」を目的として、任意で設定されるリクワイヤメントを実施するということです。
令和4年度のBIM/CIM原則適用の対象
令和5年度のBIM/CIM原則適用が来年度に迫るなか、今年度はさらにBIM/CIM適用が拡大されます。
令和4年度に適用対象となる工事、詳細設計それぞれについて確認しましょう。
BIM/CIM原則適用となる「詳細設計」
詳細設計は、一般土木と鋼橋上部を対象に、小規模を除くすべての詳細設計においてBIM/CIMが原則適用されます。
BIM/CIM原則適用となる「工事」
工事では、一般土木と鋼橋上部の大規模構造物の工事を対象に原則適用されます。
令和5年度には、BIM/CIM原則適用の対象は大規模構造物の工事から小規模を除くすべての工事へと拡大します。
令和4年度「詳細設計」における実施方針
「3次元モデル成果物作成要領(案)」は必須
令和4年度のBIM/CIM適用対象となる詳細設計では「3次元モデル成果物作成要領(案)」に基づく3次元モデルの作成・納品が求められています。
「3次元モデル成果物作成要領(案)」では、3次元モデル成果物に関する業務の流れのほか、作成方法や詳細度、属性情報等の仕様等について定めています。BIM/CIM適用の詳細設計では、令和3年度からこの要領に従って3次元モデルを作成、納品することを必須としています。
詳細設計の受注者は「3次元モデル成果物作成要領(案)」に従って、業務を実施しましょう。
リクワイヤメント7項目から任意で設定
令和4年度のBIM/CIM活用業務におけるリクワイヤメント項目は、測量業務に適用される新規1項目「既存地形及び地物の3次元データ作成」が加わり、7項目となりました。
詳細設計では「3次元モデル成果物作成要領(案)」の適用を必須としたうえで、上記リクワイヤメント7項目のなかから任意で設定されるリクワイヤメントを実施することになります。
リクワイヤメントの設定は、円滑な事業実施を目的に発注者が任意設定することが想定されています。円滑な事業実施の例として、円滑な協議、業務効率化、後工程のリスク回避などが挙げられています。
ただし、受注者側でも各リクワイヤメントの実施目的や適用が見込まれる場合について記された下図の内容を把握しておきましょう。発注者が任意のリクワイヤメントを設定した意図や目的の理解に役立つでしょう。
令和4年度「工事」における実施方針
設計3次元モデルの照査・検討での活用が必須
令和4年度のBIM/CIM適用対象となる工事では、設計3次元モデルを用いた設計図書の照査や施工計画の検討での活用が求められてます。
詳細設計と施工間での3次元モデルの連携・発展により、下記のような効果が期待されています。
- 完成イメージ共有、設計条件の確実な伝達による関係者協議の円滑化
- 設計ミスに起因する変更協議の低減
- ICT施⼯で活⽤可能な3次元データ提供による⽣産性向上
リクワイヤメント4項目から任意で設定
令和4年度のBIM/CIM活用工事におけるリクワイヤメント項目は、令和3年度から特に変更はありませんでした。リクワイヤメント4項目のなかから任意で設定されたリクワイヤメントを実施することとなります。
BIM/CIM活用業務と異なる項目は、「BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化」と「BIM/CIMを活用した変更協議等の省力化」の2項目です。ネットワークカメラを用いた遠隔臨場による現場確認、Web会議システムを利用した現場確認による業務効率化などが例として挙げられます。
受注者は、発注者が任意のリクワイヤメントを設定した意図や目的を理解するために、下図に記された各リクワイヤメントの実施概要等を把握しておくとよいでしょう。
まとめ
本記事では、「第7回 BIM/CIM推進委員会」(2022年2月21日開催)で示された、2022年度(令和4年度)のBIM/CIM実施方針について、リクワイヤメント等に関する情報に絞って整理、解説しました。
同委員会では、2021年度のBIM/CIM活用業務・工事の見込み件数についても報告しています。この報告によると、未定も含めて計805件(2021年9月時点)の実施、2020年度に比べ50%以上の増加となる見込み、とのことです。
「第7回 BIM/CIM推進委員会」資料には、このほか、令和5年度のBIM/CIM原則適用化に向けて、今回の記事だけではご紹介しきれない最新動向が報告されています。2023年度以降の新たなロードマップ案なども示されましたので、ぜひ確認しましょう。
参考文献
1)国土交通省(2022)「第7回BIM/CIM推進委員会(令和4年2月)資料3-1 令和5年度以降のBIM/CIM活用に向けた進め方」、国土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000091.html
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