人気のBIM/CIM対応ソフト、AUTODESK®社製のCivil 3D®やRevit®に加え、V-nasClair®やTREND-CORE®など徹底比較!建設コンサル出身のBIM/CIM経験者が、活用場面別におすすめソフトを特徴・機能の違いから解説します。

目的別おすすめソフトの紹介  

住民説明など合意形成の場で活用したい 。

住民説明などの場でBIM/CIMモデルを活用すれば、設計した土木構造物と地形や住宅などの周辺環境のモデルを表現することが可能です。計画の内容を直感的に理解することや様々なシミュレーションを行うことができます。計画の内容を直感的に把握することでイメージの共有が容易となり、関係者の共通認識を高めて合意形成の迅速化につながります。 

Infra Works Lumion
製品Lumion
メーカーAutodesk ACT-3D
特徴✔︎土木などのインフラ設計機能が充実。
✔︎プロジェクトの可視化に特化。
✔︎周辺環境や自然環境を再現したなかでの構造物の視覚化。
✔︎大量のデータを集約したモデル作成が可能 。
✔︎建築分野で活躍するハイクオリティかつ高速なレンダリング。
✔︎簡単な操作性

Infra Works

Infra Worksは土木などのインフラ設計に加え、既存の構造物や自然環境の再現性が高い、プロジェクトの可視化に特化した3D CADソフトです。

広範囲の周辺環境を再現できるため、3次元の都市モデルや自然環境モデルを用いた景観検討に利用できるほか、日照シミュレーションや洪水シミュレーションなども可能です。 

Lumion

Lumionは、レンダリングの質の高さが特徴です。レンダリングとは、3次元モデルで作成された立体物に、色や素材などの質感、光の当たり具合などの演出効果を加え、よりリアルな表現に近づけることをいいます。

VR や360°パノラマ画像を用いた構造物のプレゼンテーションなどに効果を発揮します。

3次元地形モデルを作成したい。 

土木構造物は、地形を考慮して施設を配置させるため、地形を三次元上に再現することは非常に重要です。特に、急峻な地形に配置する砂防施設やダム、山間部の高速道路や橋梁等を計画する際には周辺地形の再現は、プロジェクトの中で非常に重要な役割を果たします。 

Civil 3D Infra Works 
製品
メーカー Autodesk Autodesk 
特徴 ✔︎国土地理院の基盤地図情報などから容易に3次元地形モデルを作成可能。
✔︎大容量の3次元地形モデルの作成・編集が可能。
✔︎断面図の作成、標高別の色分けも可能。 
✔︎現況地形モデルを容易に作成可能。
✔︎アニメーションやシミュレーションが可能。
✔︎グレーディング機能など、視覚的に修正しやすい。 

Civil 3D

Civil 3D は、国土地理院の基盤地図情報や点群データなどさまざまなデータから3次元地形モデル(サーフェス)を作成し、解析できます。

道路などの線形構造物を作成すれば、任意の平面線形から縦断図が作成できたり、線形検討の効率化や土量算出が容易となります。データが大容量となる大きなサーフェスの構築や格納も可能です。 

Infra Works

Infra Worksは、コンセプトデザインツールと呼ばれ、土地開発や都市計画といった事業計画の作成、プレゼンテーションの場面で役立ちます。

様々な形式のデータを統合することが可能な点に強みがあります。たとえば、Civil 3Dで作成した3次元地形モデル(サーフェス)上に、Revitで作成した構造物モデルを統合するなど、広域統合モデルを作成することができます。

さらに、洪水シミュレーションや日照検討も可能です。 

簡単な構造物モデルを作成したい。 

3次元モデルの作り込みの程度(詳細度)は、目的や段階に応じて異なります。概略設計など、高い詳細度が求められていない場面では、任意形状の構造物を簡単に作成できるソフトを使用することで労力を省くことができます。

後工程で使用するソフトにデータを取り込めるなど、後工程の作業にも対応できるソフトを使用すれば、作業効率があがります。 

V-nasClair Sketchup 
製品SketchUp-logo
メーカー 川田テクノシステム Trimble 
特徴 ✔︎建設・土木に特化しており作業性が高い。
✔︎断面からスイープするだけで、TINサーフェスとソリッドモデルを同時に作成することが可能。
✔︎モデルの移動や回転がラクで、操作性が高い。 
✔︎直感的な操作性ですばやく簡単に作成可能。
✔︎任意形状を作成できるためハンドリングが良い。
✔︎Autodesk製品との互換性が良い。  

V-nasClair

V-nasClairは、建設・土木に特化した国産の3D CADです。計画や設計における3次元モデル作成や編集の場面で活躍します。

汎用性が高く、BIM/CIMモデル(地形・地質・線形・土工形状・構造物)や点群をオールインワンで扱うことができる、統合モデル管理に特化したシステムです。

作業性が高いため、簡単な構造物を作成する段階から活躍します。 

Sketchup

Sketchupは主に建築やインテリア業界で幅広く使用されてきた3次元モデリングソフトです。直感的な操作性が優れているため、簡単な構造物であればすばやく簡単に作成することが可能です。 

SketchUpはこれまで位置情報が付与できなかったのですが、BIM/CIMソフトと連携強化した、建設・土木・測量業のための「SketchUp for CONSTRUCTION」が発売されました。 

また、SketchUpはAutodesk社のBIMソフト「Revit」で建物を設計する前段階で使用されることが多かったのですが、オートデスクからもSketchUpによく似たソフト「Autodesk FormIt」が提供されています。 

複雑な構造物モデルを作成したい。 

詳細度の高い複雑な構造物モデルを作成したい場合、汎用性が高いAutodesk製品がおすすめです。複雑な形状の構造モデル作成や土木構造物に付帯する機械設備などの3次元モデルとの連携が可能だからです。 

Revit Inventor 
製品autodesk-inventor-logo
メーカー Autodesk Autodesk 
特徴 ✔︎構造物に建物の構成要素や機械設備などの部品、属性情報を連携可能。
✔︎設計から施工まで一元管理可能。
✔︎パラメトリックなコンポーネントを作成可能。 
✔︎Auto CADで作成する図面ファイルに用いられるDWGファイル形式との連携が可能。
✔︎他社の設計済み製造系3次元データを読み込み、形状を簡略化してIFCファイル形式で出力可能。
✔︎パラメータによる設計効率化が可能。

Revit

Revitは、建物を構成する要素(柱・床・壁など)と部材ごとの属性情報(寸法・数量・価格など)を連携することができるBIMソフトです。建築の設計から施工までのすべての工程を一つの構造物モデルで一元管理することができます。

3次元モデルを先に作成すれば、3次元モデルから任意の位置で従来の2次元の平面図や断面図を自動作成することができます。また、設計段階から構造解析や鉄筋干渉確認を行う、フロントローディングの実施が可能となります。 

Inventor

Inventorは製造業の機械設計などで製品開発のために使用される3D CADソフトです。

他社の設計済み製造系3次元データを読み込み、形状を簡略化してIFCファイル形式で出力できます。また、Autodesk社のAutoCADやFusion、Revitなどで作成したデータと連携することもできます。 

施工手順を示したい。 

BIM/CIMモデルを活用して施工プロセスを可視化することで、施工計画時において周辺環境との位置関係が把握しやすくなり、施工時の安全性が向上する、施工手順の確認や工程管理が効率化する、出来形管理の迅速化につながるといった効果が期待できます。 

NavisworksV-nasClair TREND-CORE
製品
メーカー Autodesk川田テクノシステム福井コンピュータ
特徴 ✔︎施工シミュレーションを示す場合、グラフィックに強い。
✔︎Autodesk製品との連携。
✔︎比較的簡単に3Dモデル化が可能。
✔︎施工ステップを表示しやすい。
✔︎工程管理で設定した工期をもとに施工ステップを表示。
✔︎豊富な土木施工専用の3D部品(建材・機材)。
✔︎比較的簡単に3D・4Dモデル化が可能。 
✔︎重機可動範囲や危険箇所を見える化。

施工手順は上記のいずれのソフトでも対応可能ですが、複雑な施工手順を3次元モデルで再現し、かつ時間軸を加えた施工シミュレーションで表したい場合、グラフィックに強いNavisworksがおすすめです。

V-nasClair

V-nasClairは、任意形状のソリッドモデルを容易に作成できるうえ、グラフィック機能を抑えているため、施工ステップを表示しやすい強みがあります。 

TREND-CORE

TREND-COREは、重機や機材等の3D部品が充実しています。特に重機は、各機材の作業範囲等がモデルごとに登録されているため、各重機を使った施工シミュレーションが容易に再現できます。 

属性情報を簡単に付与したい。 

BIM/CIMモデルの属性情報について、モデル上で属性情報を管理するのが難しい、施工情報も追加したいといった場合、属性情報を簡単に作成・管理するツールが活用できます。 

属性情報付与は、Autodesk、川田テクノシステム、福井コンピュータのいずれの製品でも対応可能ですが、ここではアドオンソフトに絞って紹介します。 

Navis+  
製品navispuls_logo
メーカー 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
特徴✔︎Autodesk Navisworksで表示した3次元モデルから属性リストの出力・読込。
✔︎Excelファイルで属性情報の作成・編集・管理が可能。  

Navis+は、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が開発した3次元属性管理用ソフトです。Autodesk社製Navisworks上で動作することができるアドオンソフトです。

Navisworksで表示した3次元モデルから属性リストをExcelで出力・読込することができるため、属性情報をExcel上で作成・編集・管理することができます。読み込んだ属性情報を利用すれば、数量計算なども行うことが可能です。 

日照検討をしたい。 

日照検討は、特に橋梁などの大型土木構造物の計画・設計場面で重要視されています。BIM/CIMモデルでの日照シミュレーションにおすすめのソフトはInfraWorksとLumionです。 

InfraWorks Lumion
製品Lumion
メーカー Autodesk ACT-3D
特徴 ✔︎日照の扱いが簡単 。
✔︎Autodesk製品で作成した構造物データと連携させたシミュレーションが可能。
✔︎ 時刻変化のアニメーションが可能。
✔︎ レンダリングが優れている。
✔︎ 太陽の位置や動きをよりリアルに検証できる詳細設定(緯度経度や地図での場所指定、年月日時分での時間指定、アングルなど)が可能。
✔︎時刻変化のアニメーションが可能。
✔︎雨や雪などの天気の設定が可能。

InfraWorks

InfraWorksなら、InfraWorks上で再現した周辺環境にRevitで作成した構造物モデルを反映して日照シミュレーションを行うことができます。 

Lumion

レンダリングが優れたLumionであれば、より自然な日照シミュレーションを行うことができるほか、雨や雪などの天気の違いによる表現を行うことも可能です。 

点群データを取り扱いたい。 

3次元レーザースキャナーを搭載したドローン等で計測した点群データは、処理・編集機能をもつ点群処理用ソフトを利用することで膨大なデータもスムーズに取り扱うことができ、生産性向上に繋がります。 

TREND-POINTRecap
製品trendpoint-logoautodesk-recap-logo
メーカー福井コンピュータAutodesk
特徴✔︎国内特化のソフトで「i-Construction」に対応。
✔︎国内仕様なのでデータのインポート・エクスポート時のトラブルが少ない。
✔︎点群データの扱いや活用が簡単。
✔︎各種フィルタリングによる前処理や縦横断データ作成などの活用が容易。
✔︎メッシュ土量計算、ヒートマップ表示と計算結果の数値表示(オプション)機能。
✔︎ 扱いやすいUI 。 
✔︎同じAutodesk製品との互換性が高く、形式を変えずAutodesk製品への読み込みが可能。
✔︎点群データをフォトリアリスティックに視覚化し、距離や角度などの計測も可能。
✔︎無償体験版もあり、期間が過ぎても無料機能だけの使用も可能。 

TREND-POINT

TREND-POINTは、福井コンピュータから販売される3次元点群処理システムです。国内特化型の点に強みがあり、国土交通省の「i-Construction」の要領・基準に準拠した成果作成が可能です。直感的に操作しやすく、国内仕様のためデータのインポート・エクスポートでもトラブルが少ない点が特徴です。 

さまざまなフィルタリング機能で点群データの前処理を効率化することが可能で、土量計算や縦横断データ作成といった点群データ活用機能も揃っています。また、出来型管理をサポートするヒートマップ表示や、計算結果の数値表示機能がオプション機能で揃っています。 

DXF/DWGファイル形式での出力にも対応し、他のCADソフトへの受け渡しも可能ですが、同社から販売されている情報共有システム「CIMPHONY Plus」や3次元CADシステム「TREND-CORE」などを併用すれば、連携がよりスムーズになります。 

ReCap

Autodesk社の ReCap は、現在、無料の「ReCap」と、有料の「ReCap Pro」「ReCap 360」が提供されています。点群を扱うのは「ReCap」もしくは「ReCap Pro」で、「ReCap Photo」は写真から3次元モデルを作成するソフトです。「ReCap Pro」を使用すれば、レーザースキャナーで取得した点群データを他のAutodesk製品で取り扱うための様々な前処理を行えるほか、点群データの編集や視覚化も可能です。 

Recapは、AECコレクション(Autodesk社のBIM/CIMツールの販売セット)にも含まれています。または、Recapの無償体験版を試し、有償のRecap Proを購入するか、Recapの無料機能だけを引き続き使用するか選択可能です。有償版と無償版の比較はこちらをご参照ください。  

活用目的や用途にあった最適なソフトを選びましょう 

本記事の後編では、目的別おすすめソフトを紹介しました。同じ目的で使用するBIM/CIM対応ソフトでも、ソフトの機能や特徴によって、作成したBIM/CIMモデルの活用方法もさまざまです。また、ソフトや関連システムの組み合わせによって生産性向上、成果品質の向上にも大きく影響します。ソフト選びの際は、ソフトの特徴や強みをよく把握した上で、業務の目的を達成し、課題を解決するためにどのようにBIM/CIMモデルを活用すればよいかイメージしながら、最適なソフトを検討しましょう。自社に最適なソフトを選定することができれば、図面をただ3次元化するだけの作業ではなく、生産性の向上や成果品質の向上、高付加価値の提供につなげることができます。 

参考文献
1)Autodesk Inc. 「AEC Collection」 、AUTODESKウェブサイト   
  https://www.autodesk.co.jp/collections/architecture-engineering-construction/overview?term=1-YEAR&tab=subscription(2021年11月29日 閲覧) 
2)川田テクノシステム株式会社「3D汎用CAD『V-nasClair』|川田テクノシステム(株) 」、川田テクノシステム株式会社ウェブサイト 
  https://www.kts.co.jp/seijyou/v_nasclair/index.html(2021年11月29日 閲覧) 
3)福井コンピュータ株式会社 「TREND-CORE(トレンドコア) 概要|土木CAD – 福井コンピュータ 」、福井コンピュータ株式会社ウェブサイト
  https://const.fukuicompu.co.jp/products/trendcore/index.html(2021年11月29日 閲覧) 
4)福井コンピュータ株式会社 「TREND-POINT(トレンドポイント) 概要|土木CAD – 福井コンピュータ」、福井コンピュータ株式会社ウェブサイト
  https://const.fukuicompu.co.jp/products/trendpoint/index.html(2021年11月29日 閲覧) 
5)有限会社リビングCG「Lumion|建築レンダリングソフトウェア」 、LivingCGウェブサイト
https://lumion3d.jp/(2021年11月29日 閲覧)
6)Trimble Inc.3D デザインソフトウェア | ウェブでの 3D モデリング | SketchUp」、Trimble Inc.ウェブサイト
https://www.sketchup.com/ja(2021年11月29日 閲覧)
7)CTC 伊藤忠テクノソリューションズNavis+:建設・建築 3D属性管理ソフトウェア」、CTC 伊藤忠テクノソリューションズウェブサイト
https://www.engineering-eye.com/NAVISPLUS/(2021年11月29日 閲覧)