本記事では、令和4年3月に改定・公表された「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」の改定ポイントについて解説します。
2022年3月24日、 BIM/CIM関連基準・要領等の制定・改定が発表されました。今回改定・制定された BIM/CIM関連基準・要領等だけでも数多くあり、すべての変更点を把握するだけでも大変です。
令和4年度3月に制定・改定されたBIM/CIM関連基準・要領等 出典:「i-Construction推進のための基準要領等の制定・改定について」 (国土技術政策総合研究所)
そこで本記事では令和4年3月改訂版の「BIM/CIMガイドライン(案)」に絞り、国土交通省の下記資料に沿って、改定ポイントを解説します。
4月18日現在、最新の「BIM/CIMガイドライン(案)」はBIM/CIMポータルサイト上で掲載されてませんので、国土交通省ウェブサイト「BIM/CIM関連基準・要領等 令和4年3月」から確認しましょう。
「構成」についての改定ポイント
「電気通信設備編」の追加
「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」はBIM/CIMモデルの作成に関する基本指針が示されたもので、大きく分けて「共通編」と「各分野編」の2つあります。「共通編」では活用目的や適用範囲、BIM/CIMモデルの考え方、BIM/CIM活用の流れといった基本方針が定められています。
毎年、構成の再編や内容の見直しが行われていますが、今回の改定では「各分野編」として新たに「電気通信設備編」が加わりました。
「共通編」についての改定ポイント
地質・土質モデル活用時のリスクを留意事項として整理、活用事例の充実
共通編で特に大きく内容が変更された章は「第3章 地質・土質モデル」です。
今回の改定では、地質・土質モデル活用におけるリスクなどを留意事項として再整理するとともに、モデルの活用や作成に関する内容を全面的に改定しています。
地質・土質モデルの活用事例に関しては、令和3年3月改定版では3ページほどしか割かれていませんでしたが、令和4年3月の改定では新たに「2. モデルの活用」の節を加え、10ページにわたって活用事例をまとめて示しています。
また、今回の改訂により追加された、第3章の「2.10 地質・土質モデルの活用時の留意事項」では、地質・土質モデルに内在する不確実性やリスクを把握したうえでモデルを適切に活用するため、地質・土質モデルの種類別に留意事項が示されています。
公共基準点の活用
今年度の改定に伴い、第1章の「2.3 座標参照系・単位」が「2.3 座標参照系・公共基準点」に変更されました。また、新たに「2.3.2 公共基準点の活用」が追加されました。
測量・調査や設計など各段階で作成するBIM/CIMモデルの位置や向きを公共基準点で設定しておくことで、後工程でのBIM/CIMモデルの統合作業や統合したBIM/CIM モデルを活用する際、BIM/CIMモデルの不整合を防ぐことができます。
さらに、公共基準点の活用によって、 DX推進に向けた国土交通データプラットフォームでの利用や、オルソ画像や点群データとの関連付けといったように、多方面での統一的な運用が期待できます。そのため、詳細設計の最終成果物については「3次元モデル成果物作成要領(案)」の付属資料4「プロセス間連携における基準点の扱いの効果的な運用方法」に従って基準点オブジェクトを作成することや、「BIM/CIMモデル作成 事前協議・引継書シー ト」に公共基準点に関する情報を記載することなどが定められています。
「各分野編」についての改定ポイント
河川編、道路編に概略設計・予備設計での活用事例が追加
昨年度の改定では詳細設計での活用が追加されましたが、今年度の改定では、詳細設計の前工程となる概略設計・予備設計での活用が道路編と河川編に追加されました。
道路編、河川編に追加された概略設計・予備設計での活用事例をそれぞれみていきましょう。
河川編
設計に関する章については、令和3年3月改定版では「3 設計」の1つの章でしたが、令和4年3月改定版では2つの章に分かれ、「3 予備設計」と「4 詳細設計」があります。
予備設計 (築堤・護岸、樋門 )
道路編
道路編についても、設計に関する章は令和3年3月改定版では「3 設計」の1つの章でしたが、令和4年3月改定版では2つの章に分かれて「3 概略、予備設計」と「4 詳細設計」となりました。それぞれの章で道路・トンネル・橋梁の事例が紹介されています。
概略、予備設計 (道路)
概略、予備設計 (トンネル)
概略、予備設計(橋梁)
新たな活用事例が追加
今年度の改定では、新たな活用事例として環境影響確認などの活用事例が加わりました。
環境影響確認 (道路)
道路編では、「4 詳細設計」に「4.4 環境影響確認」が加わりました。BIM/CIMモデルを活用した環境影響確認の事例として、「4.4.1 日照阻害の確認」と「4.4.2 発破騒音等の解析」が紹介されています。
まとめ
本記事では令和4年3月に改定された BIM/CIM関連基準・要領等のなかから、「BIM/CIM活用ガイドライン(案) 」について、改定のポイントに絞って解説しました。そのほかBIM/CIM関連基準・要領等の改定ポイントについては、「 i-Construction 推進のための基準要領等の制定・改定について」(国土技術政策総合研究所)にまとめられていますから、ぜひ確認しましょう。
参考文献
1)国土交通省「BIM/CIM関連基準・要領等 令和4年3月」、国土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000102.html(2022年3月30日 閲覧)
2)国土交通省「第7回 BIM/CIM推進委員会(令和4年2月21日) 」 、国土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001464926.pdf(2022年3月30日 閲覧)
3)国土技術政策総合研究所「i-Construction 推進のための基準要領等の制定・改定について」 、国土技術政策総合研究所ウェブサイト
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/kisya20220324.pdf(2022年3月30日 閲覧)