国土交通省は、令和5年度からBIM/CIMの原則適用を開始し、公共工事におけるBIM/CIMの活用が義務化されました。これに伴い、各県でも道路や橋梁、ダムなどのインフラ整備において、BIM/CIMが本格的に導入され、活用が進んでいます。
BIM/CIMには専門用語が多く、初心者にとっては理解しにくいこともあるでしょう。本記事では、BIM/CIMの導入や活用にあたり、必ず押さえておきたい用語をわかりやすく解説します。
TINサーフェス
TINサーフェスとは、点を三角形で繋いだ面状のオブジェクトのことです。TIN(ティン)は「不規則な三角系網(Triangulated Irregular Network)」を意味し、別名「三角網」とも呼ばれています。
点の密度に応じて、大小さまざまな三角形を用いるため、複雑な地形や不規則な起伏も滑らかに表現できるのが特徴です。作成したTINサーフェスを利用して、断面図の作成や標高別の色分けなど、視覚的にわかりやすい解析も行うことも可能です。
TINサーフェスは、標高データや測量データなどの点群データから表面を生成するのに適しています。主に現況地形や掘削、盛土、切土など、地形データを正確に表現するために活用されています。
サーフェス
サーフェスとは、物体の表面のみの表現に用いられるオブジェクトを指します。厚みを持たない面で構成されており、中身の情報を持ちません。空のダンボールをイメージするとわかりやすいでしょう。
サーフェスは、形状を定義するためのものであり、体積や質量の計算はできません。その分データ量が軽く、複雑なデザインや自由度の高い形状表現が可能です。
曲面や複雑なデザインのモデリングに適しており、主に建築物や工業デザインなどで広く活用されています。
ソリッド
ソリッドとは、物体の表面と中身の表現に用いられるオブジェクトのことです。頂点・線・面で構成されており、体積もあります。
サーフェスが中身の情報を持たないのに対し、ソリッドは厚みや体積、密度、質量といった中身の情報を持ちます。サーフェスが空のダンボールなら、ソリッドは粘土細工をイメージすると良いでしょう。
ソリッドには、物体内外の情報があるため、具体的な形状や物理的な特性を考慮した設計に適しています。体積や質量、強度、耐久性の計算、部品の干渉や検証も可能です。
立体の造形物を作成する3Dプリンターでも、このソリッドデータが用いられています。
LandXML
LandXMLとは、主に土地造成、土木工事、測量のデータ交換のための標準フォーマットです。Civil 3D®で作成した地形モデルや線形モデル、縦横断図の情報などを、LandXMLフォーマットで書き出すことが可能です。
オープンなフォーマットであり、国内外で多くのCADやソフトウェアに対応しています。これにより、異なるソフトウェア間でのデータや情報の共有が容易となります。
J-LandXML
J-LandXMLとは、LandXMLに一部拡張を行った日本独自のデータ形式です。具体的には、日本国内の道路設計や河川事業の設計・施工で使用する属性情報が追加されています。
J-LandXMLの正式名称は、「LandXML1.2に準じた3次元設計データ交換標準(案)」です。LandXMLと区別するために、頭⽂字に「J」が付けられています。J-LandXMLは、「日本向けにカスタマイズされたLandXML」と捉えるとわかりやすいでしょう。
J-LandXMLには、BIM/CIMやi-Constructionに対応した3次元設計データを、LandXMLに準拠した形式で表記するためのルールが定められています。データ形式を統一することで、異なるソフトウェア間でもスムーズな連携が可能です。設計データの一貫性が保たれることで、設計ミスやエラーが減少し、業務全体の効率化や正確性の向上も期待できます。
現在、国土交通省直轄の道路設計業務と河川設計業務におけるBIM/CIMモデルについては、「J-LandXML及びオリジナルファイル」での納品が求められています。
IFC
IFC(Industry Foundation Classes)とは、構造物モデルの標準フォーマットです。 建物や構造物の設計や施工などの各段階で使用され、建物の形状に加え、構成要素や各種要素の関連性なども統一的に管理します。
異なるソフトウェア間でもデータの互換性を確保し、スムーズに共有できることから、国際標準規格(ISO 16739)として広く採用されているフォーマットです。
建設事業は、調査・測量・設計・施工・維持管理と、さまざまな段階で多くの受発注者が関与します。異なるソフトウェア同士では、オリジナルファイルのデータ形式が違うケースも少なくありません。互換性がない場合、情報を正しく引き継ぐことができず、データの整合性に問題が生じることがあります。
しかし、BIM/CIM活用のためには、情報を適切に引き継がなければなりません。IFCを経由すれば、適切な情報交換が可能となります。国土交通省直轄事業では、構造物モデルはIFCデータおよびオリジナルファイルでの納品が求められています。
まとめ
ここまで、BIM/CIMにおいて使用される基本的な用語を解説しました。
BIM/CIM活用は、今後ますます広がっていくことが予想されます。その流れに対応するためには、基本的な用語を正しく理解することが必要不可欠です。基本を押さえ、BIM/CIMを最大限に活用していきましょう。