今回は、BIM/CIMの作業効率化に繋がる開発事例を解説します。建築・土木分野でBIM/CIMの導入が加速しています。設計業務の自動化・効率化はプロジェクト成功の鍵となるでしょう。
本記事では、プログラミング未経験者でも使えるビジュアルツールDynamoの実践活用法やジェネレーティブデザインによる最適設計の自動生成、AIを活用した図面照査の効率化事例をご紹介します。
Dynamoを活用したモデリング自動化
設計や施工における効率化を進めるには、作業の自動化が欠かせません。DynamoはBIM/CIMと連携しながら業務を支援するツールの1つです。
Dynamoとは
Dynamo（ダイナモ）は、Autodesk RevitやCivil 3Dに標準搭載されている無料のビジュアルプログラミングツールです。追加ライセンス不要で利用でき、ノード（箱）をつなげるだけでプログラムを作成できるため、プログラミング初心者でも扱いやすい点が特徴です。
建築情報モデリング（BIM）や土木情報モデリング（CIM）の作業効率化を支援します。特に設計ルールの自動化やデータ処理を伴うプロジェクトにおいて、効果を発揮するツールです。
業務における課題
現場での各業務がスムーズにデータ連携されていない場合、以下のような課題を抱えている場合があります。
- 各部署でICTツールを導入したが、本当に仕事が効率化して楽になった実感がない。
- 設計段階で3次元データ化しても、施工段階で上手く活用されていない。
- 工事元請けから受領した図面（2次元）をマンパワーで手間をかけて数量や座標をひろっている。
- 積算担当者、施工計画担当者、現場担当者での情報が連携されておらず図面照査などを重複して行っている。
- 工事記録など社内データが保存されていないため、不具合が発生したときに証拠となるものを提出できない。
- 工事データが引き継がれていない場合、現場担当者などが急に退職してしまうとフォロー作業に労力がかかる。
- 設計ノウハウや現場ノウハウが属人的になっており、技術がうまく継承されていない。
Dynamoを使うメリット
Dynamoを使うメリット・解決できる課題は以下の通りです。
- ビジュアルプログラミングで直感的に操作可能
プログラミング経験がなくても、ノードを組み合わせるだけで簡単に自動化スクリプトを作成できます。
- Revit作業の自動化
反復的な作業を効率化し、手動操作を減らします。たとえば、一括変更やデータ抽出、パラメトリックデザインを迅速に実現可能です。
- 高いカスタマイズ性
PythonやDesignScriptとの連携により、標準機能を超えた強力な自動化処理を実装できます。プラグインを活用することで、さらなる機能拡張も容易です。
- データ活用が容易
Excelやデータベースと連携し、設計データを抽出・管理できます。これにより、データの分析や最適化に役立つワークフローを構築でき、設計品質向上をサポートします。
Dynamoのデメリット
Dynamoは主にデータ処理やワークフロー自動化のツールのため、RevitやRhinoほど自由な3Dモデリングには向いていない点は注意が必要です。DynamoはRevitの作業を大幅に効率化できるため、設計のルール化やデータ処理が多いプロジェクトで活用すると効果を発揮します。
Dynamoのアップグレードに伴い、強化された機能については「Civil 3D® 2025の新機能解説：TINサーフェスの詳細レベルの設定や機能の改善などを紹介」もぜひ参考にしてください。
設計プロセスの効率化（ジェネレーティブデザイン）
近年、設計の複雑化に伴い、作業効率の向上が求められています。その解決策の一つとして注目されているのが、ジェネレーティブデザインの活用です。Malmeでジェネレーティブデザインを活用し業務を効率化した例として、地盤改良工における改良体の配置検討があります。
ジェネレーティブデザインとは
ジェネレーティブデザインは、設計者が設定した条件に基づき、ソフトが自動で最適なレイアウト案を複数自動で生成する技術です。これにより、人が考えたレイアウトと比較しながら、条件を満たす最適解を効率的に見つけ出せるようになります。
さらに、技術者が選定した最適解を自動で3次元モデル化し、数量算出まで実施することで、設計プロセス全体の効率が向上します。
従来の改良体配置における課題とジェネレーティブデザインの活用
従来の改良体配置においては以下のような課題がありました。
- 設計者の経験や技量に依存した配置検討になる。
- 特殊な構造ではパターン検討に多大な時間がかかり、条件変更などによって発生する作業ロスが大きい。
上記のような課題はジェネレーティブデザインの活用により、効率化が可能です。ソフトが設計条件を満たす案を複数自動生成し、配置パターンや改良径、杭⾧、セメント量などを考慮した最適解を提示します。
ジェネレーティブデザインは、人を機械に置き換えるためのものではありません。効率的に設計の最適化が図れるようにし、設計者を支援するための技術と言えるでしょう。
特に、複数のパラメータが存在する土木設計に有効であり、パラメータに基づいて複数のソリューションを生成できるため、従来の設計手法に比べて柔軟性が高まります。
設計・施工プロセスにおける図面照査効率化
設計・施工プロセスでは、図面照査に多くの時間と労力がかかります。AIやOCR技術を活用することで、さらなる効率化が求められています。
AI＋OCR技術の活用により、作業負荷を軽減するための図面情報の抽出から調査までを自動化・半自動化するステップは以下の通りです。
図面照査効率化のステップ
ステップ1：図面情報の抽出
AI＋OCR技術を活用し、紙やPDF形式の図面からテキストや数値データを自動抽出します。これにより、手作業による入力ミスを防ぎつつ、迅速なデータ取得が可能となります。
ステップ2：調査の自動・半自動化
抽出した図面情報を基に、事前に設定したチェックルールに沿って照査を実行します。調査作業の自動化・半自動化機能は、プロジェクトごとに異なる要件に合わせてオーダーメイドで構築が可能です。調査の結果は「記録・共有」機能で一元管理できます。
ステップ3：照査結果の活用
照査の結果は自動でレポート化され、図面の不備や矛盾点を一覧表示します。これにより、設計者や施工管理者が迅速に対応でき、品質向上と手戻り削減に貢献します。
まとめ
本記事ではBIM/CIMの作業効率化に繋がる開発事例を解説しました。
Dynamoを核としたBIM/CIMの自動化技術は、人の仕事を機械に置き換えるためのものではありません。設計作業をより効率的に進め、最適な設計を実現するために、設計者をサポートする技術です。
Dynamoを起点にした業務改革は、建設業界の生産性向上に役立つでしょう。明日から実践できる自動化のエッセンスを、今後もご紹介していきます。