BIM/CIMの原則適用が進む中、「3次元モデルを作ること」自体はもはや珍しいことではなくなってきました。しかし、設計が終わった後に成果品としてモデルを作る従来のやり方では、手戻りのたびに図面とモデルの両方を修正する二重作業が発生します。

本記事では、設計検討の初期段階から3次元モデルを活用する「3次元設計」の考え方を紹介します。従来の設計フローとの違い、設計担当者にとっての具体的なメリット、そして特に効果を発揮する検討場面について解説します。

3次元設計とは ― 「モデル主体で設計する」への転換

国土交通省は、2023年度より直轄土木業務・工事においてBIM/CIMの原則適用を開始しました。さらに、i-Construction 2.0(令和6年4月公表)では、3次元モデルの標準化と契約図書への活用に向けた取組が示されており、設計プロセスそのものの3次元化も検討が本格化しています。

この流れの中で重要なのは、BIM/CIMモデルを「成果品として後から作る」のか、「設計検討ツールとして最初から使う」のかという違いです。

従来の設計フロー:設計の後にモデルを作る

従来の設計フローでは、業務後半に3次元モデルを作成する工程が独立して存在していました。

これは設計検討が終わった後に”成果品づくり”として行うものであり、設計手戻りが発生すると2次元図面とは別にモデルも修正が必要になります。

3次元設計フロー:モデル主体で設計し、図面はモデルから出力する

3次元設計とは、設計検討の初期段階から3次元モデルを主体的に用いる手法です。

必要に応じて2次元での検討も行いますが、3次元モデルを設計の中心に据えることで、設計検討の過程でモデルが段階的に完成していく点が従来フローとの大きな違いです。図面や数量はモデルから出力するため、修正時もモデルを直せば図面に反映できます。

設計担当者にとっての5つのメリット

では、3次元設計を導入すると設計担当者の業務はどう変わるのでしょうか。ここでは具体的な5つのメリットを紹介します。

① 修正が「一箇所直せば全部直る」になる

2次元設計では、計画の修正が発生すると平面図・縦断図・横断図をそれぞれ個別に直す必要があります。

一方、3次元設計では、3次元モデルを修正すれば各種図面に反映できるため、修正工数を大幅に削減できます。手戻りが多い業務ほど、この差は大きくなります。

※ 図面への反映範囲や自動化の程度は、使用するソフトウェアやモデルの構成によって異なります。

② 複数案の比較検討が「代表断面のみ」から「区間全体」に広がる

2次元設計では、複数案の図面一式を作成する工数が大きく、「代表断面のみで比較」「案数を2〜3案に絞る」といった判断をせざるを得ない場面があります。

その点、3次元設計では、モデルから土工量・潰れ地面積・用地取得面積などを素早く算出できるため、より多くの案を区間全体で精度高く比較することが可能になります。

③ 2次元図面・数量の整合が保たれる

2次元設計では、平面図・縦断図・横断図・数量計算書をそれぞれ個別に管理するため、「平面を直したが縦断を直し忘れた」といった修正漏れが起きやすい構造にあります。

3次元設計では、3次元モデルから図面を書き出す運用にすることで、こうした整合ミスを構造的に防ぎやすくなります。数量もモデルから算出できるため、数量計算書の作成工数も削減が見込めます。

④ 発注者協議で「完成形を見せながら」説明できる

2次元図面での協議では、構造的な形状や施工ヤードの範囲が伝わりにくく、関係者間の認識にズレが生じることがあります。

3次元設計では、設計初期段階から3次元モデルが存在するため、協議の場で完成形を視覚的に提示でき、合意形成のスピードと質が変わります。

⑤ 設計とモデル作成が一体化し、業務効率が向上する

従来のフローでは、設計会社とBIM/CIM専門会社を別々に発注するケースがあり、手戻りが発生すると両社間の調整に時間とコストがかかっていました。

3次元設計では設計とモデル作成が一体化するため、こうした分離発注に伴う調整コストが解消されます。

3次元設計が特に効果を発揮する検討場面

3次元設計はすべての業務で同じ効果が出るわけではありません。特に、2次元設計では対応が難しかった以下の場面で効果が顕著です。

複数案の比較検討

計画法線・縦断勾配・横断形状のフィードバックを3Dモデル上で行い、横断図を書き出して比較検討。計画延長が長い河道計画・築堤工ほど効果が大きくなります。

坂路・堤内排水路の配置計画

堤防2Hライン・用地界・周辺施設を同時に考慮しながら形状を検討。三面図では難しかった詳細形状の計画が可能になります。

土工形状の検討

3次元地盤モデルで地層境界を把握し、地層ごとに掘削勾配を変えた土工形状モデルを作成。三面図では表現できなかった立体的な土工形状の設計が可能になります。

仮設・施工ステップの検討

現況地形と支障物を3次元で確認しながら仮設配置を計画。設計段階で施工リスクを立体的に把握できます。

まとめ

3次元設計への移行は「ツールを3Dにする」という話ではなく、設計プロセスそのものを変えるという話です。

「手戻りが多い業務」「複数案の比較検討が必要な業務」から試験的に導入し、効果を実感することが、組織全体での移行を進める現実的な第一歩になります。


本記事はBIM/CIM HUB編集部が作成しました。